この色をシュタイナーは「肌色」とも「肉色」とも呼んだので、動きがもたらされると同時に新しい問題も生じました。
プリズムの実験を思い起こすと、その新しい色が登場するためには暗闇が消える必要がありました。そこでなぜシュタイナーがこのように呼んだのか合点がゆきます。つまりこれは暗闇を克服した色だからです。
しかしそれはスピリチュアルな意味で語られているに違いありません。ひと眠りした後に疲れを克服すると、この新鮮な色がほほに差します。この色は弾力的なからだに浸透し、血を媒介して現れる私たちの活動表現なのです。つまり日ごと夜ごと、このからだの闇を克服して元気を回復するのでなければ、私たちのからだは一日たりと生きられないのです。
赤ちゃんの生命を地上生活に入ることによって死の危険を克服したものと考えるならば、この色が誕生後に現れる人の命の典型的な色であると言うことができます。生まれた場所にかかわらず、世界中の赤ちゃんはこの色を帯びているでしょう。その色は黒人にも観察できるように手の平や足裏にいつまでも残っています。
白人の肌は表面全体がこの色だろうと思うかもしれませんが、一見すれば、肌色はまさに個人の色であると分かります。実際、だれもが微妙に異なる肌色をもっています。ここでようやく人物像にまつわる絵画の主要課題に幾分なりと触れるというわけではありません。
ポートレート画家が、肌色作りにおいてシュタイナーのアドバイスに満足することは決してないでしょう。その手法では、まさにかわいい赤ちゃんの肌色には至りますが、早くも一歳を過ぎれば変化していく色にすぎません。したがって画家がポートレートやヌードを描くにあたり、自分独自のやり方でこの色を扱わなければならないのです。
この問題を念頭に絵画の美術史をひもとけば、新たな興味をそそられます。著名な画家達がどのようにこの問題を解決していったのかと観察すると、それは実り多い魅力的な出発点となるでしょう。
特に興味深いのは、印象派と呼ばれる画家達(ルノアール、モネ、スーラーなど)の肌と陰影の部分の描き方です。表現主義派ではヤウレンスキーとスイスのホドラーが、補色の緑を陰影に用いて似たような試みを行っています。しかし彼らは人物に与える明暗の効果よりも、2色の波動が生み出す特殊なムードや肌色への作用に関心をもっていました。緑は赤やバラ色にある種の苦みを加え、子供時代の甘美な特徴とは対照的な「年齢のバランス」を作り出します。
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